2014年 5月 08日

花幻文裕大姉

『花々の系譜』などの著作で知られる畑裕子さんが、5月3日、遠くに旅立たれました。2年前から闘病生活が続き、一旦は元気になられたとお聞きしていただけに残念です。同年代のかたに可愛らしいというのも大変失礼ですが、やさしいお声、眼差し、可愛い笑顔が素敵で、多くのファンがおいでになった作家です。とりわけ畑さんには、滋賀県の女性の生き方に深く思い入れがあり、綿密な調査と彼女独特の表現や洞察力がどの作品にも浮かんできています。
 表記の「花幻文裕」という法名は、葬儀を執り行われた鈴木導師が命名されたとのこと、鈴木さんは畑さんの大ファンであったらしく、通夜で、作品の数々をご紹介されながら故人の足跡を熱ぽく語られていたのが印象的でした。「花」は彼女のヒット作『花々の系譜』から、「幻」は、作家へのきっかけとなった朝日新人文学賞受賞作『面・変幻』からおとりになったとのことでした。
『花々の系譜』発行に至る経緯は、滋賀を題材にした大河ドラマ誘致作戦をご提案されていたNHK大津放送局三原局長の提唱で、畑さんに「はつ」を主人公に書き下ろしていただいた作品です。この本が出来上がったその日、平成二十三年の大河ドラマが浅井三姉妹「江」に決まったとの知らせを受けたのでした。既に滋賀を離れておられた三原局長と電話で大喜びしたものでした。大河ドラマの主人公は三女の「江」でしたが、『花々の系譜』では畑さんは三姉妹の異母弟、浅井喜八郎を登場させて、いきいきした歴史小説が仕上がったのです。そして、続けて放映直前には『浅井三姉妹を歩く』を完成させていただいきました。
 最初の『近江百人一首を歩く』以来、『近江戦国の女たち』『源氏物語の近江を歩く』のような近江歴史ガイドが中心でしたが、「少しご無理を言いますが」とのお申し出は滋賀県文学賞受賞作『天上の鼓』でした。最期の著書となった『百歳ものがたり』よんでみたいような、それでいてなにか吹っ切れてしますのではないかと思案しつつ、未だ閉じたまま机上に置かれています。あのやさしいお声が聞けない寂しさと共に、ご無理をお願いできない悔しさをも感じています。畑裕子さんありがとうございました。

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