2020年 3月 09日
磯田道史氏による渡辺俊経著『甲賀忍者の真実 末裔が明かすその姿とは』評が毎日新聞書評欄「今週の本棚」に掲載されました
磯田道史氏評
▼子孫の意地/大量史料で実在を証明
本書は著者がすごい。忍者本は山ほどあるが、こんな本はない。ほんとうに曽祖父が忍者で、それをつゆ知らずに育ったひ孫が書いた本だからである。
……渡辺さんが屋敷の中を探すと、出てくるわ出てくるわ忍者の古文書が。なんと百五十点。忍術書もあった。
……書かれたのには、忍者の子孫の「憤慨」があったようである。まえがき、にある。「大方の学者先生は古文書や先人の文献とやらを駆使してもっともらしい説明をなさるが、実は現地の実情が全く分かってない空論であることが多い」
……貧乏になった甲賀の名門農民が「忍者、忍者」と騒いでいただけ、という甲賀忍者虚像論である。『甲賀市史』も忍者を大きくは取り上げてくれなかった、と、甲南忍術研究会の人々は、私にいう。
ところが、である。甲賀忍者はちゃんといた。渡辺さんの家には、曽祖父が、尾張藩の忍びであり、忍術で仕えていた確かな証拠がのこっていた。
……甲賀の忍術が戦国期にどのように展開するかも、地元の視点から詳述している。
甲賀忍者に興味をもつ方には必読の書であろう(毎日新聞2020/03/08)
▼『甲賀忍者の真実 末裔が明かすその姿とは』 ISBN978-4-88325-675-4
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