2020年 7月 27日

中日新聞夕刊で、疫病退散!角大師ムック編集部編『疫神病除の護符に描かれた元三大師良源』が紹介されました

 
▼ほんの裏ばなし/平穏願い高僧に熱視線
 
「おおきに。立派な冊子になりましたなあ」。六月十一日、「三川のお大師さん」こと玉泉寺(滋賀県長浜市三川町)にお納めすると、ご住職は早速、仏さんにお供えしてくださった。
 
「滋賀から元三大師を推さなあかんやろ」と思っていた。感染症をめぐる状況は日増しに悪化し、四月十六日、緊急事態宣言が全国に拡大。外出など「自粛要請」により、観光・飲食・小売業などは国から補償もないまま休業に追い込まれた。
 
 あらゆる業界に閉塞感が漂い、書店も閉められ、出版関係のイベントも軒なみ中止。少し明るい話題として注目されたのが妖怪アマビエだ。江戸時代、熊本の海に現れ、病が流行したらその姿を写して人々に見せるよう言ったという。似たような話は、すでに平安時代に元三大師の先例がある。
 
 元三大師とは、比叡山延暦寺(大津市)を発展させた高僧・良源(九一二~九八五年、一月三日が命日)の通称。疫病がはやると角の生えた鬼の姿「角大師」となって疫病神を撃退し、「この姿をお札にして家の戸口に貼るよう人々に配りなさい」と弟子に命じたという。
 
 二〇一二年発行の地域情報誌「み~な びわ湖から」百十四号(おみくじの元祖元三大師特集)に、良源についての総説とお札の写真が載っている。同誌編集室の小西光代さんと、執筆した長浜城歴史博物館学芸員の福井智英さんのご了解のもと、それらも掲載したムックを六月に緊急出版することになった。五月七日のことである。
 
 福井さんが集めた三千院(京都市)や真禅院(岐阜県垂井町)、寛永寺(東京都)、喜多院(埼玉県川越市)などのお札の写真十七点は、小西さんがカラーデータを用意してくださった。
 
 良源の生誕地という玉泉寺や良源の母が出生祈願をしたという大吉寺(長浜市野瀬町)の坐像や御籤箱などの写真は、お寺の許可をいただき、長浜城歴史博物館にデータをお借りした。
 
 表紙には玉泉寺が三月に復刻した江戸時代の疫神病除の護符(角大師のお札)をあしらい、吉田慈敬住職にお寺の歴史についてご寄稿いただいた。
 
 このように短期間で多方面のお世話になった謝意と、コロナ禍終息の願いを込め、編者名は「角大師」の文字を入れた編集チームのような名前にした。
 
 六月十二日、長浜城歴史博物館で福井さんが記者会見。
「アマビエ以前からの伝説が残る地元生まれの元三大師良源のことも知ってほしい」
 
「お大師さん」は宗派を超えて庶民に親しまれ、現在もあつい信仰を集めている。ムックに収まらなかった福井さんの研究成果は、この苦境を乗り越えた後、まとめて世に問いたい。(中日新聞夕刊2020/07/25)‬
 
疫神病除の護符に描かれた元三大師良源
ISBN978-4-88325-693-8
 

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