2011年 4月 04日

珍しい孔版画展

和歌山県立近代美術館で「版画の『アナ』-ガリ版がつなぐ孔版画の歴史ー」という企画展にでかけた。担当学芸員の植野さんから、当社創業者、岩根豊秀と同時代を生きただろう清水武次郎さんの作品展のご案内をいただいたので出かけた。同時に、何度も催促されていた母の生まれ育った堺のまちを訪問という大義名分もあった。

堺では同行した妹のナビゲータよろしく、母の思い出を辿りつつ、おいしいもの巡りをし、翌日和歌山近代美術館へ。現代版画の周辺を巡る企画内容に堪能。

清水武次郎さんは、和歌山に生まれ、教員を経て孔版印刷業の中から、独創的な手法で多くの作品を生み出してこられた人だという。会場には懐かしい孔版印刷界の猛者の氏名が見られ、同行した母も往時を懐かしがっていた。子供の頃から孔版画の作品はかなりみており、また近年は謄写印刷機を発明した堀井謄写堂旧宅であるガリ版伝承館で毎年、さまざまな孔版画作家の展示会があるのでここでも、かなりの作品を見ていたはずであるが、清水さんの作品はいずれも大きく超えていると思えた。
展示解説では「和紙を加工した独特の原紙を使用した」とされていたが、おそらく毛筆原紙のことだと思うが、この原紙を使用したことから生まれる微妙な味わいは硬質な孔版画から逸脱した味わいがかんじられた。展示作品の中で自動製版機を使用したという説明もあったが、おそらく豊秀も多様した謄写Faxという製版機のことであろう。
時間の都合で植野さんの展示解説を拝聴できなかったが、懐かしさと新しさを同時に感じることができた企画展であった。展示図録がなかったことに一抹の寂しさをかんじながら、いづこも事情が同じだとかんじたのであった。
残念なのは謄写印刷は孔版印刷でもなく、やはり「ガリ版」といわないと一般的には通じないのだということを再認識したことでもあった。

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