近江植物風土記

別冊淡海文庫 19
近江植物風土記

滋賀植物同好会 編
B6判 184ページ 並製
ISBN978-4-88325-436-1 C0045
奥付の初版発行年月:2011年01月
書店発売日:2011年01月30日
在庫あり
1800円+税

担当から一言

『近江の鎮守の森』『近江の名木・並木道』『近江路花歩き』に続く、滋賀植物同好会による最新決定版。

内容紹介

万葉集に詠まれたアカネとムラサキなど、近江の植物は人々の営みと深く関わってきた。滋賀県内各地の聞き取り調査をもとに、衣食住や風俗、風習、信仰、伝統行事と結びついた植物についての故事来歴と現状をカラー写真とともに紹介。かつてのような人々と植物との親密な関係を取り戻すための手引きとなっている。

目次

■ア
アイ(タデアイ)/アカネとムラサキ/アサ/アセビ(アシビ)/イ/イヌザクラ/イブキと名のつく植物/エゴノキ/エドヒガン/エノキ/オオボウシバナ/オニバス
■カ
カキ(甘柿)/カキ(干柿)/カツラ(山王祭のカツラ)/カツラ(富の木渡しのカツラ)/カブ/カブ(日野菜カブ)/カブ(矢島カブ)/キク/クヌギ/クワ/ケヤキ/コンニャク
■サ
サルトリイバラ/シキミ/ソバ
■タ
ダイコン(伊吹大根)/ダイコン(山田大根)/ダイズ/タケ/チガヤ/チャノキ/トコロ
■ナ
ナス/ナタネ/ニンニク/ヌルデ/ネジキ/ノリウツギ
■ハ
バイカモ/ハス/ヒカゲノカズラ/ヒサカキ/ヒメヤシャブシ/ボダイジュ/ホンシャクナゲ
■マ
マツ(いろは松)/マツ(湖西の松並木)/マツ(浮世絵に描かれた松)/マツ(うつくし松)/ムギ/ムベ/メタセコイア/モ(水草)
■ヤ
ヤナギタデ/ヤマザクラ/ユウガオ(瓢箪)/ユウガオ(干瓢)/ヨシ/ヨモギ
■コラム
青物神輿/木地師と木地材/日本茶の由来/琵琶湖岸の海浜植物/近江売薬と薬草/滋賀の牧野富太郎

前書きなど

 日本は四季に恵まれた国である。自然の移り変わりを最も大切にした人々の暮らしは、経済成長が声高に主張され始める前までの日本の原風景であった。
 近江にも琵琶湖を取り巻く自然とともに暮らす営みがあった。そうした営みの中で植物は人々の心と一つになって大きな暮らしの役目を担っていた。それは、衣食住はもとより風俗、風習、信仰、伝統行事などの主役にもなり、またその土地の特産品として守られてきたものもあった。
 本書の執筆にあたって人々と植物の結び付きが紹介できたらというねらいがあった。土地の人々の話を聞くことからはじめ、それらの植物がそれぞれの土地で人々とどのように結ばれてきたかの考えから、あえて本書を「近江植物風土記」と名づけた。
 今回取り上げた一木一草にもこれほど多くの話題が聞き取れたのかと驚き、自然や植物に対する人々の細やかな愛情や鋭い観察眼には敬服するものがあった。身近にある草や木は全てといってよいほど、生活にまつわる中で故事来歴が語り継がれ、近江の人々の生活にいかに溶け込んできたかを痛感させられた。
 ところが、ここ三十数年の間に近江の自然も損なわれ、村は過疎化が進み、一方で都市化、工業化へと変化する中で、身近な自然は減少の一途をたどってきた。この都市化、工業化の波が人々の暮らしや意識を大きく変え、年中行事の植物を見ても、正月の門松、節分の豆とヒイラギ、モモとひな祭り、端午の節句のショウブ、七夕のササなどの由来すら知らない人々が増え、日々の暮らしからこうした行事、風習を伝える意義が薄れる変化が起きていることも思い知らされた。
 執筆した同好の士は本書が人々と植物がかつての親密な関係を取り戻し、そこから豊かな近江を創り、子や孫に引き継ぐ橋渡しになれば望外の喜びである。

著者プロフィール

滋賀植物同好会(シガショクブツドウコウカイ)

1984年(昭和59)11月3日、湖南アルプス・笹間ヶ岳の第1回例会で産声をあげ、翌年1月、第1回総会を開いて正式に発足。以来、県内を中心に250回におよぶフィールドワーク(植物を中心とした自然観察会)を実施するとともに、『びわ湖グリーンハイク』(1994)、『びわ湖フラワーハイク』花木篇、草花篇(1996、1997)、『近江植物歳時記』(1998)〔以上、京都新聞社刊〕、淡海文庫17『近江の鎮守の森』(2000)、別冊淡海文庫12『近江の名木・並木道』(2003)、近江旅の本『近江路花歩き』(2008)、〔以上、サンライズ出版刊〕などの本を出版。

   

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