論理と集合

論理と集合 数学を理解するための基礎

辻 一夫
A5判 208ページ 上製
ISBN978-4-88325-685-3 C2041
奥付の初版発行年月:2020年06月
書店発売日:2020年06月20日
在庫あり
2800円+税

内容紹介

 高校数学と大学数学の間にあるといわれる大きなギャップとは、何だろうか。著者は自分の体験から理数系学部で学ぶ数学のベースにある最も重要な考え方は、論理学とそこから導かれた集合論にあると考えた。高校ではていねいに教えられず、大学では既習のこととして詳細な議論を省くことが多いのではないか。
 こんな思いから高校数学を学んだ理数系志望の学生ならじゅうぶんに読みこなせる「論理と集合」の解説書がうまれた。
 本書はれっきとした数学の本である。術語や記号をていねいに定義し、例示・例題により理解を補い、簡潔で汎用性の高い定理へと導いてくれる。大学では演習問題として片づけられることが多い定理の証明も、本書ではじつに細かく示される。
 基本的に「定義」と「定理」を厳格に積み重ねていく構成であるが、堅苦しさはない。大学数学の論理にちょっと抵抗を感じたら、本書が程よい道しるべになってくれるであろう。

目次

第1部 論理
  第1章 命題論理
    §1-1 命題と真理値………………………………………7
    §1-2 論理同値…………………………………………10
    §1-3 論理記号…………………………………………11
    §1-4 命題論理で成り立つ法則………………………15
    §1-5 ド・モルガンの法則……………………………21
    §1-6 恒真命題と恒偽命題……………………………23
    §1-7 含意………………………………………………25
    §1-8 演繹と同値………………………………………38
  第2章 述語論理
    §2-1 述語とは何か……………………………………43
    §2-2 全称命題…………………………………………47
    §2-3 存在命題…………………………………………52
    §2-4 全称と存在が混在する命題……………………57
    §2-5 全称命題と存在命題の否定……………………61
    §2-6 述語論理の事例…………………………………64
  第3章 証明の方法
    §3-1 演繹による3つの証明方法……………………73
    §3-2 証明法の根拠……………………………………74
    §3-3 証明の具体的事例………………………………76
第2部 集合
 第4章 集合の基礎
    §4-1 集合の用語……………………………………81
    §4-2 集合の表し方…………………………………84
    §4-3 集合の同等……………………………………86
    §4-4 部分集合………………………………………89
第5章 集合の演算
  §5-1 合併集合………………………………………92
   §5-2 交差集合………………………………………95
   §5-3 差集合…………………………………………99
   §5-4 普遍集合………………………………………101
   §5-5 補集合…………………………………………102
   §5-6 直積集合………………………………………107
   §5-7 巾集合…………………………………………112
   §5-8 まとめ…………………………………………114
第3部 集合上の関係
第6章 関係
  §6-1 関係とは………………………………………116
  §6-2 二項関係………………………………………120
  §6-3 同値関係………………………………………124
  §6-4 類別……………………………………………129
  §6-5 同値類…………………………………………第7章 写像と関数
    §7-1 写像とは……………………………………135
    §7-2 写像のグラフ………………………………145
    §7-3 写像の種類…………………………………148
    §7-4 合成写像……………………………………154
    §7-5 逆写像………………………………………159
    §7-6 単射と全射の双対性………………………160
    §7-7 全単射の性質………………………………161
    §7-8 集合の写像特性……………………………164
    §7-9 射影…………………………………………168
第8章 特性関数
    §8-1 写像の集合…………………………………170
    §8-2 特性関数……………………………………170
    §8-3 特性関数の性質……………………………174
    §8-4 元の個数と特性関数………………………178
第9章 順序
    §9-1 順序とは……………………………………181
    §9-2 順序関係と部分順序集合…………………190
    §9-3 全順序………………………………………191
    §9-4 最大元と最小元……………………………192
    §9-5 極大元と極小元……………………………194
    §9-6 上界と下界、および有界…………………196
    §9-7 上限と下限…………………………………197

前書きなど

筆者が大学に入学し、初めて受けた数学の授業は解析学であった。講師の先生は何の説明もなく、藪から棒に、関数f(x)がx=aにおいて連続であるとは、∀ε>0,∃δ>0,……と切り出した。高校の数学にそれなりの自信を持っていた私ではあったが、何のことやらさっぱり分からず、大学の数学に面くらってしまった。数学の前期の試験成績は確か15点であったことを思い出した。これが世にいう「高校の数学と大学の数学との断絶」であったのだろう。
 当時は適切な参考書などはなく、講師の板書をメモしたノートのみであった。それを何度も読み返して理解しようと努めたが、結局のところ、なぜそれでよいのかが分からなかった。そのうち、学園紛争の嵐に巻き込まれてしまった。定年後になって時間ができたとき、学生時代にやり残した部分や理解できなかった点について、もう一度勉強しようと思い立ち、後書きに記した書物などを勉強して、ようやく理解することができた。
 その過程において、当たり前のこととして教わらなかった「論理学」が自分には欠落していたことを理解した。そこで、本書では、大学の数学を理解するのに必須となる論理を解説し、論理を根幹として集合論が築かれ、その集合の上に各種の数学的諸概念が築かれていることを示した。いずれも高校程度の数学の素養があれば、理解できる内容である。
 本書を読まれ、科学の基礎となっている数学と、論理の上に成り立っている数学を学んでいただきたい。これこそが筆者の望むところである。

著者プロフィール

辻 一夫(ツジ カズオ)

1947年 滋賀県多賀町に生まれる。1965年滋賀県立彦根東高校卒業、1971年京都大学理学部物理学科卒業、住友電気工業(株)入社。
・世界で初めて1.3カラットの大きさのダイヤモンド単結晶の合成に成功
・cBN-TiN系セラミックの超高圧焼結に世界で初めて成功し、工具材料の刃先として実用化の先鞭をつける
・その生産の中核となる超高圧・高温技術の開発、及び関連する硬質材料の切断加工技術の開発に従事。2007年定年退職。
Npo法人コアネットに所属し、中高生にロボットプログラミングを教えている。

   

2件のコメント


  1. 上記の本の詳細を知りたいので、目次を教えてください。

    コメント by すだち — 2020年6月6日 @ 3:06 PM


  2. 目次投稿、遅くなり申し訳ございません。アップ致しました。

    コメント by iwane-harumi — 2020年6月8日 @ 8:11 AM

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