座談会 博物館を愉しく、旅を豊かに!

旅における博物館の位置づけ

──コーディネーターを務める滋賀県立近代美術館の和澄です。県博協※1設立35周年記念パネルディスカッション「みんなで語る! 滋賀県の博物館の旅・観光」を開催します。ここでは、博物館の第一線で活躍する皆さまに滋賀県の観光や博物館の魅力と、観光などに行ったおり、その地の文化や風土、空気などに触れるための博物館活用法について話し合います。まずは琵琶湖博物館の篠原館長、博物館を旅の中に組み込むメリットをご教示ください。

篠原 全国に博物館は現在5700ほどあります。私は博物館は嫌いでした。文化や自然を切り取って見せるよりも、自分で歩いたほうがいいと思っていたんです。けれども歳を取ると、地域の社会や文化、あるいは自然を知る入口として機能していることがわかるわけです。「入口」とは、博物館が、ある地域に行った際、そこがどんなところかを深く知るきっかけとなるという意味です。

 博物館法では動物園、植物園、それから美術館も資料館も交流館もすべてが博物館です。そういう意味では、こうした施設はすべて文化、歴史、自然の入口としての〝博物館〟だと考えています。

──その土地の文化、風土に触れたいときにまず行くべきところというような位置づけですね。たくさんの外国を巡られた経験を通じて、多文化の中で印象的な博物館の位置づけをお聞かせいただければ。

高田 >例えばロンドンの大英博物館は、世界中の宝物からガラクタまで展示されている網羅的な博物館です。けれども、同じイギリスでもエディンバラに行くと、中世から近代の初めくらいに人々が住んでいた家を、台所道具から掃除道具まで全部そのままにして置いているところがある。こうした、昔の暮らしが実感できるような小さな民間博物館を見ると、「昔の人はこんな暮らし方をしていたんだ」ということが見えて、大変おもしろいなと。

──博物館も一つのジャンルに絞ったものから、いろんなジャンルを展示するものまでありますね。

 草津宿街道交流館もテーマを絞って、街道、人の行き交いを展示しておられます。範囲を地元に絞り込まれたということになると思いますが、館の目的や狙いを八杉館長、お願いできますか。

八杉 私どもは施設規模としては小さな資料館です。ただ、草津には草津宿本陣という貴重な近世交通遺構が残っており、それとあわせて「街道や江戸時代の旅に関する、文化や歴史の入口の役割を担う」ことを目的に活動しています。

 教科書にある歴史は、国立博物館や県立博物館レベルのグローバルな視野で展開し、地方の博物館は、人々の暮らしや生活・文化に光を当てられればと考えています。

──訪日外客は、地方でも増えています。こうしたお客さんが、何を目当てに日本に来ているのかを南部さんにお聞きします。MIHO MUSEUMさんは失礼ながら、最寄りの琵琶湖線の駅からバスで50分と行くのが大変なところにある半面、外国のお客さんがたくさん来られています。具体的に年間どれくらい、何を目的にこられているのでしょうか。

南部 年間来館者15万人のうち2割、約3万人は海外からです。内訳は半分が台湾、中国系。もう半分が欧米からです。私どもは滋賀県ではなく「京都から車で1時間のところにある美術館」と認識されています。

 最近は旅行の形態が変わり、パッケージツアーが減っています。がんばって電車とバスを乗り継いで来られるんですが、なかなか行けないから「わざわざ足を運ぶ」という面もあるように思います。以前にイスラエルの方が「日本ならではの生活が感じられる風景を見られた」と道中の棚田の美しさを口にされていました。

 MIHO MUSEUMひいては日本に来たからには、「日本酒を飲みたい」とか「日本美術が見たい」とおっしゃいます。そういう楽しみに加えて山の中にあって、世間と共存している、そういう現実を見に来られているようです。

MIHO MUSEUMに足を運ぶ外国人観光客

MIHO MUSEUMに足を運ぶ外国人観光客

──田舎でも多くの外国人を見かけるのは、「ここに日本らしい風景がある」と気づき始めているからでしょう。「MIHO MUSEUMが滋賀にあると思っていない」とうかがいました。京都の一部と思われているのかもしれません。一方で会場からも、「歴史や文化面で滋賀と京都がコラボレーションするのはどうか」という意見があげられています。

 高田先生は京都生まれ、京都育ちの滋賀暮らしということで、滋賀に来て見るメリットをうかがえますでしょうか。

高田 京都は一種のディズニーランドみたいなもので、徹底して人手を加えた世界です。おもしろいんですけれども、そればかりだと息がつまります。同時に京都には美しい場所はたくさんあるんですが、都市としてはあまりきれいじゃない。それと比べると、琵琶湖のある風景は美しい。ただ、現在の大津市などの都市景観は風景とのバランスが取れていないように感じます。


※1 滋賀県博物館協議会(県博協) 滋賀県内の博物館施設(美術館・資料館なども含む)相互の連絡を図り、博物館活動を通じて県民文化の振興に寄与するため、公私の別・規模・分野などさまざまな特色ある博物館がその社会的使命の達成のために協力することを目指している。現在(2017年9月現在)69館が加盟。


博物館の枠組みを越えた新たな連携と協力

──篠原館長、自然の風景という話について博物館とからめていただけるとありがたいのですが。

篠原 「京都」という話が出ましたけれども、大津京に都がなくなってから1300年あまり、たとえば奈良の藤原京と京都の平安京をつくるときのヒノキ、また淡水魚・コメ、古代には鉄鉱石など、近江は大きな消費地・京都に隣接して鉄と米と魚を1000年以上供給し続けてきたんです。今でも水を供給していますよね。長い間、そういう関係が続いているから京都に従属することに慣れきってしまってるんじゃないですか。白洲正子さんは、「近江は日本の歴史の舞台裏だ」といった。そうではないと思いますね。本当は表舞台なんですよ。

 信長が安土城をつくったのは、日本の首都にするためと『信長公記』にも書いてある。なぜなら、この場所に米と魚と鉄があったからです。要するに、ここを押さえる。だから表舞台なんです。僕はもうそろそろ京都と手を切った方がいいと思っているんです。

──京都と滋賀のコラボレーションの話から、手を切るという話になっております。だいぶ古いお話が出てきましたが、草津宿の街道の風景は、比較的よく残っている方でしょう。街道沿いの宿場町がこれほど色濃く残されているのは全国でもなかなか見当たらない。

 草津宿街道交流館では、さまざまな街道との交流もあるようですが、昔からの風景を発信していくうえでの取り組みを教えていただければ。

八杉 全国で江戸時代の宿場はだいたい450余り。そのうち滋賀県には約31あります。近江は東西交通の要地で、東から西へ行くときに必ず通らねばなりません。まさに「道の国」ですね。ただ、宿場というのは街道という線でつながっていますから、城下町のように一つの町で完結するわけではありません。そういうつながりやネットワークを大事にすることで魅力を広めることができるのではないかと思います。

 例えば宿場町や街道にかかわる資料館、博物館などが手をつなぎ、魅力を広める取り組みが今後求められてくると考えます。

──いま博物館施設はどこもなかなか予算がつきづらく苦慮しています。解決法として、いろんなところと手を組んで情報を発信する。そういう方向性にシフトしてきている気がします。

 博物館同士はもちろん、例えば観光面などとの連携が大事になってくると思います。篠原館長に多方面との連携によって伝わる魅力などを教えていただければ。

篠原 連携といってもいろんな連携があるし、博物館にもいろいろな種類があります。日本の博物館が取り上げるテーマは多様でケーキ、馬、船に始まって、入れ墨や中にはマージャンまである。連携についても、民間と、例えば市町村や県の博物館などがあります。

 いまの市民は、知的水準が高いから一つの旅の中で複数回そうした施設へ行くわけです。だから競争するよりも協力した方がはるかに効果的。例えば民間の美術館は、バスを持っていたりするんですが、相談して博物館に寄ってもらう。いままでと違う客層にアプローチするので、顧客の発掘にもなる。一緒にやることが大事なんです。

 連携では博物館と学校の博学連携や福祉施設との博福連携もおもしろい。もう一つは企業との連携です。企業もいま環境問題に注視せざるを得なくなり、CSR活動などで博物館とのつながりができる。最初は、「環境問題を知るために琵琶湖博物館へ来てください」というような連携が考えられる。これをどんどんやらないといけません。互いに一緒にやる仲間、すなわちユニオンをつくっていかなくちゃいけないんです。

当日、会場の銅鐸博物館をおとずれ熱心に耳を傾ける聴衆

当日、会場の銅鐸博物館をおとずれ熱心に耳を傾ける聴衆

観光客への効果的なアプローチ

高田 西国観音霊場は33カ所で四国なら88カ所。滋賀県の博物館は69カ所あるから、これを巡礼してもらう案はどうだろう。朱印帳みたいなものを作って、コレクター心理をくすぐるのはだめだろうか。

八杉 去年くらいから交流館で上下水道普及のために草津市のマンホールカード※2を配布し始めました。コレクターは、全国から来てくれます。なかには本陣と交流館を見る方もいる。スタンプラリーには、日本人の琴線に触れるものがあると思います。

マンホールカード

草津宿街道交流館で配られているマンホールカード(画像提供:草津市)

篠原 高田さんの案につきましては、私も長い間博物館につとめていますから、似たような「日本の博物館の88カ所巡り」を30年くらい前に考えました。高齢者のためにやろうと協力を呼びかけたんです。しかし、博物館同士の協力がなくて破談になりました。

 こういう提案をすると、例えば「88カ所全部回ってやることなくなったらどうする」などの意見が出る。

僕は「2回でも3回でも回ればいい」と言いました。ディズニーランドの一番のリピーターって何回行っているかご存じですか。150回ですよ。ですから、博物館巡りも150回してもらったらいいんです。博物館巡りはこれからの時代に求められるから賛成です。

──県博協でも以前、スタンプラリーをやったんですけれども、なかなか効果が上がりませんでした。いまダムに行くと、写真が写ったダムカードをもらえます。そのためだけに山奥に来る人もいます。スタンプラリーという手法が通用しなくなったとしても、コレクター魂をくすぐるようなものが開発できればニーズはあると思います。

 博物館同士が仲間になることが大事だということなのでここでMIHO MUSEUMさんの集客の工夫をうかがいます。

南部 国内の来館者誘致には別の担当がいるんですがやはりどこかでMIHO MUSEUMの取り組みを告知する必要があります。だから車内広告など最低限の広告は必要です。例えば人が多く来るところへの看板などから始めてはいかがでしょうか。

 最近はソーシャルネットワークがもてはやされていますが、ちょっとしたクレームも広がるので怖い面もあります。ですから地道な接客応対も必要です。前事務長の方針で過去に、京都のホテルに研修に行かせていただいたこともあります。

 海外の方は、「食」に対する執着が感じられます。特に台湾には健康志向の人が多いですし、欧米の方ならオーガニックを求める方もたくさんいらっしゃいます。MIHO MUSEUMでは無農薬で手づくりの食事を出しているんですが、たくさん提供ができません。そこで、7、8年前に信楽町の皆さんに協力をお願いして受け入れてもらいました。そうするとお客様が信楽の街中に出かけます。窯元巡りもされ、信楽駅前の伝統産業会館で信楽焼の歴史を俯瞰した後に散策されるようになりました。地域にも足を延ばして、町巡りをしていただくようになっているかなと思います。

無農薬・手作りのおむすび膳

MIHO MUSEUMのレストラン「ピーチバレイ」で供される無農薬・手作りのおむすび膳(1800円・税込)

──地道な研修や地域のコミュニティーに協力を求めるといったような活動の重要さに改めて気づくことになりました。「食」というワードが出ましたが、美術館、博物館のレストランが話題になり人気に火がつくケースも増えています。高田先生、文化施設と食のコラボレーションについてはいかがでしょう。

高田 海外の美術館では歩き疲れたときに一休みできる場所は珍しくありません。日本でも高度成長期の後半くらいから、コンサートホールには必ず軽食を食べられるような場所を設けています。興味深い例として、福井県小浜市にある「御食国若狭おばま食文化館」では、土地のものを調理して食べさせるのが特長で、料理教室も開いています。南部さんに聞きたいのですが、ミュージアムショップはいかがですか。

南部 国によって買われるものが違います。アジアの方はしおりやはがきなど、ヨーロッパの方はカップなどの焼き物系を買われています。

高田 なぜおうかがいしたかというと、さっきディズニーランドの話が出ましたが、あれは博物館じゃないでしょう。「あれは遊園地や」と言いますが、そうじゃないですね。施設としては大規模商業施設なんですよ。人の目と耳とを刺激して、心を揺さぶって物を売っています。食べ物も弁当の持ち込みは禁止ですからね。

篠原 スーパーマーケットだったのか。

高田 と同時にね、例えばクエスチョンマークみたいな銀色のプラスチックが黒いコップについているものを売っている。コップに手を入れるとフック船長のような海賊気分を味わえるわけです。これはね、カリブの海賊たちというアトラクションから出たところに置いてあります。値段は数百円。この商品はデパートで売れないけど、ディズニーランドだと買ってもらえるんです。売り場に来るときには、気分は半分海賊みたいになっていますから。

 そういう意味では、銅鐸博物館に子どもたちがやって来て、粘土細工で物をつくったりすると、けっこう楽しいんじゃないかなと。展示物の中に自分が入り込んだような気分にするような工夫があるとリピーターも出るかもしれない。ディズニーランドほどではないにしろ、1回が2回になり3回になってね、この子が大人になって、今度は自分の子どもを連れて行こうかと考えることが大事なんじゃないかなと思うんです。琵琶湖博物館はどうですか?

篠原 レストランなどの改革を進めていますが、まだ道半ばです。考えなければならないのは、ミュージアムショップでの図録の販売、食堂を持っているところは食堂を含め、一環した施設として考えなければならないことです。

 例えばルーブル博物館は曜日によっては夜10時前まで開いていて、鑑賞後の余韻を楽しむことができる。ミュージアムショップも遅くまで開いているんです。けれども日本では感想を共有しようにも、そもそもレストランが開いていないし、図録を買いたいと思ってもミュージアムショップも午後5時に終わります。つまり施設として一貫性がないんです。文化を見てもらう施設として考えれば遅れているでしょう。商品もディズニーランドくらい考えつくさないといけないかもしれない。

レストラン「にほのうみ」

今年4月2日にリニューアルオープンした琵琶湖博物館のレストラン「にほのうみ」(滋賀県立琵琶湖博物館提供)

高田 そこまでしなくても。

篠原 しかし、工夫は必要。例えば琵琶湖博物館だったら、ふなずしのような郷土料理やそれに合わせた酒を出せるようにしたいですし、商品も図録だけではなくてもっとあるはず。

 商品開発でいうと、例えば目黒に寄生虫博物館がある。このミュージアムショップで何が売れると思いますか。Tシャツなんですけど、絵柄は回虫や条虫なんですよ。驚くでしょう。いまどきの女子高校生はね、回虫、条虫を見たことがないからね、「ああ、かわいい」と買うわけなんです。

高田 条虫ってサナダムシでしょう。

篠原 そうですね。

──「付加価値をつける」という部分は、いま本当にどこの博物館でも力を入れています。博物館側の人間からすると、展示を観て楽しんで帰ってもらいたい。ミュージアムショップやレストランに力を入れるのは、どうもジレンマがあるところです。「そこに力を入れるくらいなら、展示費用にお金を回してくれ」と思ったりもします。しかし、付加価値の面から展示を見にきてくれるということも起こっています。


※2 マンホールカード マンホールぶたをデザインした名刺大のカードで、表面にマンホールのふたの写真と場所を示す座標、裏面にはデザインの由来やご当地情報が掲載されている。4月28日からは第7弾の配布が始まる。


滋賀県らしさをアピールするために

──あちこちに話が飛びましたが、まとめに入ります。パネリストから「滋賀県らしさの中でも文化、風土を知ってもらう入口としての博物館」との話が出ました。滋賀県らしさを知る拠点として、旅、観光に博物館を組み込めればと考えております。

 パネリストの方それぞれに、滋賀県らしさなどをうまく博物館に行くモチベーションとするためにはどうすればよいでしょう。

高田 琵琶湖が巨大で魅力ある自然物だということをうまく伝えることでしょう。東の富士山、西の琵琶湖といわれるものの富士山に比べて琵琶湖の魅力はよく伝わっていない。一方で、例えば高島市で家に湧水を引き込んだものを「川端」といって関心が高い。水は人間が生きていくうえで一番基本的なものです。ひょいと後ろを見たら広大な集積があるわけです。そういう水の豊かさ、美しさ、魅力が引き金になって高島を訪れる人がたくさんいる。地域そのものの持つ魅力を、もう一度きちんと見直すということだと思います。

 また、そういうことを学校教育の段階でうまく取り込んでいく。さっきヨーロッパの博物館の話がありましたけれども、その展示物は教科書で触れるんです。モナリザを見たあとにグッズがあったら買うわけです。なぜなら世界的に有名だからです。

 そういう意味では、例えば学校教育で銅鐸が「見方によっては宝物だ」とすり込まれていると、「宝物のミニチュアでも買って帰ろうか」となる。すでにやっておられるとは思うんですけれども、学校の副読本の中で、滋賀の文化みたいなものを教えていくことはとても大事な気がします。

──篠原館長、滋賀県の魅力を踏まえて一言お願いします。

篠原 滋賀県は奥深い歴史が一番の魅力だと思います。琵琶湖があるがゆえに展開した歴史があるのが大変おもしろいところ。

 今、近江八幡に住んでいるんですが数百年前に八幡山城があって豊臣秀次がいて、そこから高野山に追いやられた。この道を戦国の雑兵たちが駆け回ったかと思うと、ちょっと不思議な感覚になります。いま住んでいる横を信長が歩いたかも……と想像が広がり、歴史が好きになってきました。

 やっぱり実感があるんです。だって「あそこで六角が負けて阿波の方へ逃げて行った」とか日本史に出てくる話がいっぱいあるわけでしょう。街道を含めて、「表舞台としての歴史」「歴史を実感できる場所」という面は、もう少し打ち出していくべきだと思います。

連続講座「くさつ・歴史発見塾」の様子

草津宿街道交流館で開催される連続講座「くさつ・歴史発見塾」の様子。講座には草津市内外から多くの人が訪れる

──八杉館長、篠原館長のお話を受けていかがでしょう。

八杉 今の話は、司馬遼太郎の『街道をゆく』の冒頭が「湖西のみち」から始まったというようなことですね。博物館にしても、歴史・風土の資源にしても、京都は非常にコンパクトにまとまっていますが、滋賀県は琵琶湖を中心に県内全域に広がっているわけです。

「舞台裏」という話もありましたけれど、むしろ「隠れ里」という発想でとらえますと、非常に多くの風土、文化が滋賀県内に潜在的にある。それを紹介する入口として博物館や資料館があるのが1点。

 2点目として、南部さんのお話でもありましたが、博物館へのアクセスは、滋賀県の場合、決してよくない。しかし、これも発想を転換し、施設へ行く間の自然景観などを取り入れられるのは「滋賀県らしさ」ではないかと実感しているところです。

──南部さん、座談会を振り返って一言。

南部 地元の人が大切にしているものに、人は敬意を払って評価します。そこで残されたものを研究して保存し、継承していくという、博物館の役割は地味ではあるものの、非常に大切なことだと思っています。

──ありがとうございました。限られた時間でしたが、皆さんに滋賀県の魅力を語っていただきました。その魅力を一番手早く、多様な視点で知ることができるのが博物館なのかなと総括させていただきます。

 滋賀県の多くの魅力を紹介する博物館もたくさんあります。まさに入口としてあるわけですので、ぜひとも皆さん博物館に足を運んでいただいて、その魅力に気づき再確認したうえで、それぞれの地域に出掛けていただけたらと思います。
(2017.11.19)


編集後記

京都・円山公園に行った。桜の盛りは過ぎていたにもかかわらず、外国人観光客であふれていた。このうち10分の1でも滋賀県に来てくれたらいいなと思ったが、そういう自分も京都まで足を運んでいることに気づく。座談会で篠原館長が京都からの観光客の誘致ではなく、博物館の地域の良さを広める入口としての効用を述べておられたが、まさに地道な取り組みが意識を変えると思う。来年は近江の桜を見に行こう。京都を超えるものがあるはずだ。(タ)


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