びわ湖の森のイモムシ、ケムシたち

琵琶湖博物館ブックレット 15
びわ湖の森のイモムシ、ケムシたち

寺本 憲之
A5判 128ページ 並製
ISBN978-4-88325-745-4 C0345
奥付の初版発行年月:2021年11月
書店発売日:2021年11月25日
在庫あり
1800円+税

内容紹介

自然豊かな滋賀にはイモムシやケムシがいっぱい! 琵琶湖にそそぐ川の源流にあたる山間部、中流域の河辺林や公園、下流の畑や田んぼに分けて、観察できるガ・チョウ類の幼虫を紹介。400点以上のカラー写真を用いて、奇妙な外観や色彩、不思議な生態を解説するとともに、飼育・標本作成の方法も伝授。

目次

プロローグ
第1章 源流の森のイモムシ・ケムシたち
第2章 中山間~平坦地の森・公園などの街路樹のイモムシ・ケムシたち 
第3章 平坦地の畑・田んぼなどのイモムシ・ケムシたち
第4章 多様な生態をもつイモムシ、ケムシたち
第5章 多様な色彩・形態をもつイモムシ、ケムシたち
第6章 びわ湖の森のイモムシ、ケムシたちの調査手法

前書きなど

■まえがきより
滋賀県は県土のおよそ2分の1が森林で琵琶湖の3倍の面積がある。山脈は琵琶湖を囲むように連なり、河川が奥山の森の源流から人の暮らしを営む里を通って琵琶湖につながっている。このつながりは先人たちがつくり上げた密接な関係で、健康な森があって、はじめて健全な里、そして健全な琵琶湖が生まれる。ここではその森を「びわ湖の森」と呼ぶことにする。奥山には源流の森があり、森で育んだ清水が集結して琵琶湖へと流れ出す。
健全なびわ湖の森には、その清水を利用して多様な植物たちが、そしてそれらを利用する多種多様な動物たちが育む。その生き物の中には、ガ・チョウ類の幼虫のイモムシ、ケムシたちがいる。日本には植物などを食べる6,000種以上のイモムシ、ケムシたちがいて、その特定の植物と特定の昆虫とが利用し合う関係、すなわち共進化につながってきた。現存する彼女たちは太古から種分化と淘汰を繰り返し、大きく変化する地球環境に適合するように種ごとに姿形と生態を変え、種間競争に勝ち残って生き延びてきたのだ。
もう少し観察すると、イモムシ、ケムシたちには、それらに寄生するパラサイトのハチ類(寄生蜂)、ハエ類(寄生蝿)やプレデターの鳥類などが存在する。彼らは第1次消費者(寄生者)と呼ぶ。さらに第1次消費者には第2次消費者が・・・、という具合にイモムシ、ケムシたちの世界にも巧妙な食物連鎖が成り立っている。
ところで、ぼくが知っている限り、「イモムシ、ケムシ」という生き物は害虫などと扱われて、ほとんどの人に嫌われている。その証拠として、野外で葉をバリバリ食っているイモムシ、ケムシたちを楽しそうに眺めている人を見たことがないからである。例えば、女性が庭に出て、庭木をふと見上げると、イモムシ、ケムシがいたら「キャー」と悲鳴をあげるであろう。それが、1本の木に何十匹、何百匹もいたらもうたいへんである。
しかし、ぼくはその嫌われ者のイモムシ、ケムシたちが可愛らしいと思っている。それは、彼女たちがぼくに生物進化のことなど様々なことを教えてくれるからだ。
本書では「こんにちは!びわ湖の森のイモムシ、ケムシたち」と題して、びわ湖の森に棲むイモムシ、ケムシたちを題材に、昆虫学、博物学のおもしろさについて読者のみなさんと一緒に考えてみたい。

著者プロフィール

寺本 憲之(テラモト ノリユキ)

1955年生まれ。専門は昆虫学・蚕糸学・野生動物管理学。滋賀県立琵琶湖博物館研究部特別研究員・滋賀県立大学環境科学部客員研究員(元奈良大学文学部非常講師・元滋賀県農業技術センター栽培研究部長・農業革新支援部長)(博士(農学))現在、主に「鱗翅(チョウ)目昆虫とブナ科植物との共進化」と「野生動物問題の解決手法」について研究・指導をしている。「ドングリの木はなぜイモムシ、ケムシだらけなのか?(サンライズ出版)」、「鳥獣害問題解決マニュアル -森・里の保全と地域づくり-(古今書院)」、「人による自然破壊から見た種ヒト(ホモ・サピエンス)-延命のために豊かな自然を継ぐ-(Seneca 21st)」の著書がある。

   

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