ビワコオオナマズの秘密を探る

琵琶湖博物館ブックレット 9
ビワコオオナマズの秘密を探る

前畑 政善
A5判 128ページ 並製
ISBN978-4-88325-655-6 C0345
奥付の初版発行年月:2019年02月
書店発売日:2019年02月28日
在庫あり
1500円+税

担当から一言

琵琶湖文化館水族館、琵琶湖博物館勤務を通じて長年琵琶湖の魚の研究を進めてきた著者だが、とりわけ琵琶湖でも最大級のビワコオオナマズの生態に詳しく、すでに『鯰:イメージとその素顔』(共編著、八坂書房)、『育てて調べる日本の生き物図鑑 ナマズ』(集英社)、『鯰―魚と文化の多様性』(共編著、サンライズ出版)、『田んぼの生き物たち-ナマズ』(農山漁村文化協会)など、ナマズに関する著書も多い。その研究の発端になったのが、ビワコオオナマズの産卵の現場に遭遇したことから一層の興味が増幅する。生命体の存続を願う生物のその生態を温かく見守りつつもその興味は尽きない。観察当時のエピソードも交え、楽しくかつ愛情込めた筆致でその生態を描写。一見グロテスクな生き物ではあるが、文面からなんともいとしさが彷彿してくる。主なフィールドが琵琶湖であった著者にとって漁師さんとの交流の中から思わぬ成果が埋めれることもあるという。愛すべきビワコのヌシへの愛情あふれる概説本に仕上がった。

内容紹介

日本最大のナマズであるビワコオオナマズ研究の第一人者が、その生態を詳述。とりわけ、琵琶湖北部で産卵するものと思われていたビワコオオナマズが実は南湖の瀬田川近くで産卵する現場を発見したことから、産卵時期の真夜中の観察が続けられた。時には不審者に間違えられつつも、事実を隠しとおし観察を続けその実態を本書で明らかにする。
ところが、ビワコオオナマズも近年は他の生物と同様漁獲は減少し、生育環境の悪化は決して安心していられるものではない。80年代には1か所で約200体のナマズが捕れたという話はまさに遠い昔のこととなった。一方、外来魚の繁殖でナマズの敵であったタマゴを狙う小魚も減少し、今や生態系の変化とともにビワコオオナマズの産卵場も変化してきた。ビワコオオナマズの大産卵を見て以来、ナマズ類の産卵観察を趣味としつつナマズを通して、環境とヒトの関係性にいたるまで論を進める。

目次

1章 ビワコオオナマズってどんな魚?
2章 ビワコオオナマズの産卵
3章 大変です!ビワコオオナマズ
4章 ビワコオオナマズの最大の敵
5章 ビワコオオマナズの繁殖戦略
6章 ナマズの生育と繁殖

前書きなど

■まえがき■
1974年から30年ほどの間、琵琶湖のナマズを調べてきました。そのきっかけは、1998年にふとしたことから日本最大のナマズであるビワコオオナマズの産卵をみていたく感動したからです。大きさ1メートル余もある、この大きなナマズが岸部の浅瀬で背中を見せながら、40尾、50尾もが動めくさまは、私にとってはまさにワクワク、ドキドキの世界でした。ビワコオオナマズの産卵場は、私のすむ大津市内の自宅からわずか車で15分ほどのところにありました。その後、他にもないかと湖岸を探し求めると産卵場は大津市内にもう1ヶ所ありました。
以後、ビワコオオナマズの産卵時期になると、じっとしておれず、夜な夜な観察にでかけることになりました。私の観察は5月~7、8月にかけ、連日のように夕方から夜間、時には明け方まで続けられました。オオナマズの観察を続ける中で、これまで断片的にしか知られていなかったこの大きなナマズの暮らしの一部、主には産卵の様子が徐々に明らかになってきました。同時に同じ産卵場にオオナマズ以外にもイワトコナマズとナマズ(マナマズ)も出現しました。特にイワトコナマズは、岩礁域に棲むと言うこと以外、ビワコオオナマズよりももっと生態がわかっていない魚でした。幸運と言うほかありません。以後、私は琵琶湖にすむナマズ類3種の産卵生態を調べることに没頭することになりました。
本著では、琵琶湖産ナマズ類3種の中でも、特にビワコオオナマズの産卵生態を中心に、このナマズの生態を調査していく中で出遭ったさまざまな出来事なども交えて紹介することにします。

著者プロフィール

前畑 政善(マエハタ マサヨシ)

1951年、福井県大野市に生まれ。
1974年、高知大学大学院栽培漁業学専攻・中退。
同年4月から滋賀県県立琵琶湖文化館(淡水水族館)を経て1996年から滋賀県立琵琶湖博物館勤務。
この間、日本産希少淡水魚の繁殖、オオクチバスの生態、ならびに水田魚類の研究に従事。
2002年、京都大学博士(理学)取得。
2011年神戸学院大学人文学部教授。

   

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